2013年11月24日日曜日

ウォルター・バジョット『ロンバード街 金融市場の解説』

この本の驚くべき点は、これが19世紀に書かれたということと、それに加えてこれほど「金融市場」についてその本質を易しく解説した本はないだろうと云うこと。小生も昔は企業の調査部でマクロ経済分析などはやらされたことがあるが、その際先輩から釘を刺されたことに「金融問題については深入りするな」という注意点があった。足し算引き算微分積分で分析できてしまうGDPとかのマクロ経済分析とは全く性質が異なるというのだ。曰く言いがたい「ヌエ」的存在とも言おうか。実際金融についてはよくわからず、ずっと金融市場は鵺(ヌエ)という印象を持っていた(同じ印象を持つ人が多いので、マネーゲームに走る悪い奴らだとか、金融業界はイメージが悪いのかも知れない)。そういう人はぜひこの本を読むべきだと思う。一言で言えば「ローマは一日にしてならず。金融も然り。金融市場は過去の経緯の地層的積み上げとして見なければならない」と言うことか。裨益するところ多大の古典的名著である。

内容を説明するのは省く。この本を読みながら箴言を少し抜き書きして twitter に書き散らしていたので、それをご紹介するに留めます。

2013年11月16日(土)1 tweetsource





@kafusanjin
「自己資本だけを運用している事業家は仕事に忙殺されることはまずない(もし非常に多忙であれば、それは何かが上手く行っていない印である)。イングランド銀行の理事は何世代にもわたってそうした人々によって構成されてきた」(ウォルター・バジョット)。……「貧乏暇なし」ではやっぱり駄目か。
posted at 14:42:04

2013年11月13日(水)1 tweetsource





@kafusanjin
「新たに必要とされるものは、何かを創造・創設することではなく、何かに適応することを通じて提供される。英国の銀行は良貨の供給のための銀行券発行と送金のための為替手形で信用を高め、徐々に預金銀行に発展してきたもの。他国が制度だけ真似しても成功しない理由」(ウォルター・バジョット
posted at 16:40:34

2013年11月10日(日)2 tweetssource





@kafusanjin
「実業界の人々は、目前のビジネスの潮流に敢えて働きかけない。その流れが通り過ぎるまでに、彼らは金を稼ぐか、稼ごうと努力をするものの、その流れがどこに向かうかを考えようとはしない」(ウォルター・バジョット)。……中国ブームと聞けば誰も彼も中国、エコブームと聞けば誰も彼もがエコ。
posted at 18:44:57
@kafusanjin
「イングランドでは借入資本に頼る進歩的な零細商人が(小利益率で同じ自己資本利益率が得られるので)自己資本に頼る保守的な大商人を駆逐する。これが英国経済覇権の秘密」(ウォルター・バジョット)。……資本を労働と読み替えてみると愕然とする。日本企業の自己資本(労働)比率は高すぎるのだ。
posted at 18:14:15

ロンバード街 (日経BPクラシックス)

2 件のコメント:

須賀徹 さんのコメント...

「貧乏暇なし」ではやっぱり駄目か。ーぐさりと刺さる一言です。しばらくは読めそうにないので(時間的余裕と知の蓄積がたりなため)アマゾンのほしい物リストへ。

Unknown さんのコメント...

須賀さん、お久しぶり。お元気ですか。

この本は、ずいぶん昔の本なので、実際に役に立つかどうかは不明です。むしろ物好きの趣味の本ですね。この種の嫌味が一杯あるので、シャクにさわるけど面白いことは面白いのですが……。